〜トカラ列島悪石島(鹿児島県)にて〜


夏休みを利用して8月下旬から9月の初旬まで悪石島に滞在しました (2001年)。
父親が現在悪石島小中学校に勤務しています。
研究のことなどすっかり忘れるくらい楽しんできました(笑)。

   ボゼ祭り2001年9月3日月曜日  

 
 

 悪石島では旧暦のお盆*になると、仮面神ボゼが登場します。
この写真を見せるとだいたいの人は「え、これが日本なの?」
と言いますが、インドネシアあたりの南方文化を彷彿とさせま
す(でも日本は北は道産子・北海道から南は琉球・沖縄まで、
単一民族、単一文化の国じゃない)。ボゼが手に持っている棒
は、ボゼマラといわれるもので男性生殖器を意味しています。
ボゼはこの棒についた泥(悪石島の赤土)をもっぱら女性に塗
りつけていきます。子宝に恵まれるようにとのことでしょうが、
ボゼが近づいたりすると、若い女性達は大騒ぎで逃げてまわり
ます。僕は幸い狙われることなく、落ち着いて写真が撮れました。

*お盆は祖先の霊を迎える宗教的行事ですが、どうみてもボゼは祖先の霊
ではないようです(ちょっと考えてみると、例えば僕自身の故人となっ
た肉親が、足はなくともこういう姿で現れるとは想像しにくい…)。この
辺りの事情はよく分かりません。
 

襲いかかるボゼ 
コミカルなステップを踏みながら(ユーモラスです)、突然ターゲットを
決めて襲いかかってきます。泥を塗りつけるときは全身にまとった棕櫚
(シュロ)の葉っぱをふるわせませす。

ボゼの仮面と僕
 ボゼは午後3時過ぎぐらいに出て来ましたが、登場時間はだいたい5分
くらいと短いものでした。今回は民宿:西荘のご主人、PTA会長さん、
悪石島総代の甥っ子さん(普段はどこか都会で生活されている様子)の
お三方がボゼのお面をかぶっていました。
 これより前の日にボゼを作っているところを見学しました。見学する
前に島の女性の方に「見に行ってもいいですか」と一応お尋ねすると、
「女性は駄目かもしれないけど、あなたは男だから大丈夫よ」と言われ
ました。最近までボゼ祭りは公開されていなかったそうなので、やはり
その辺りは厳しいのかなと思ったのですが、実際見に行ってみると女性
の方もいらして緩やかになっているようです。
 ボゼは目の部分以外は竹(リュウキュウチク)で平たいひごを作り、
それを組み合わせて骨格を作ります。その骨格に紙を張り合わせ色を塗
ります。ボゼの目の部分は段ボールをお椀が出来るように * な形に
切って作っていました。島の青年層が中心になって作っていましたが、
島の文化を取材に来ていた女性達数人(大学生、院生)にも手伝わせて
いました。

 ボゼ祭りは三日に渡ります。最終日にボゼが登場するのですが、その
前の晩は島の青年層が各家々を回って盆踊りをします。僕も参加させて
もらいました。踊りはそれほど複雑ではなく、見よう見まねで何とか踊
ることが出来ました。各家につくとその家の庭木の枝を一本折って扇子
代わりにするのですが(踊り終わったらその場に捨てる)、何気なく枝
振りの良さそうなのを折ろうとすると、「おお、それはここのご主人が
大事にしている木だから折っちゃイカン」と島の方が慌てていました(笑)。
ところで盆踊りには歌もあり、島の方々は朗々と歌われていましたが、
歌詞を知らない僕は覚えたての部分を少ししか歌えませんでした。今度
はちゃんと歌えるようになろう(『十島村史』に歌詞が載っていました)。
その晩はあいにくの土砂降りでしたが(その為写真がありません)、各
家々でお酒をもらいながら踊り歩く内にいい気分になり、島の方々にも
少しとけ込めたようで楽しい時間を過ごせました。
 調べたところによると悪石島は1600年頃までは琉球文化圏だったよう
ですが、その後薩摩藩の支配下になり、琉球文化の痕跡は同潘によって
消去されたようです。この盆踊りに関してはリズムも琉球的ではなく、
京都を中心とする日本本土の文化圏の踊りのようでした。


追記
再び悪石島に渡航する機会(2002年4月初旬)があった。これで三度目だが、
三度目になって気付くことがあった。それは島の人が結構忙しいということ
だった。ある方(男性)は、「旅行で来る人は島はのんびりしていていいね
えと言うけど、私なんかは明日のスケジュールが頭の中にぎっしり詰まって
いて、とてものんびりはしていられない…」というようなことを仰っていた。
どの方もフェリー十島が入港すれば荷役の仕事があり、家畜(牛)の世話
(時に出産があったりする)、日雇いの仕事(建設工事)、、ゴミの処理な
どの公共の仕事……と、たくさんの仕事を抱えておられるようだった。でも
がんじがらめのスケジュールというわけでもないようで、釣りなどしている
と、仕事の合間に見物に来られたり、魚釣りのアドバイスなどをもらったり
した。(2002.4.11)
 


お ま け(釣り自慢…)